「ユニフォームは汚れるためにある」——高校球児と先輩への想いをつなぐ、プロの仕事
先日、お店に1本のお電話が入りました。
「高校野球のユニフォームが、全体に汚れがかなりすごいんです」。。。
詳しく伺うと、それは息子さんが先輩から借りた大切なユニフォーム。
試合で思い切りプレーした結果、泥だらけになってしまったとのこと。
「預かって見てみないとわかりませんが、持ってきていただけますか?」とお答えすると、当日、お父様がユニフォームを抱えて来店されました。
ドアを開けた瞬間、心配そうな表情が伝わってきます。
「…落ちますか?」
その声には、先輩からの信頼を裏切りたくない親心がにじんでいました。
私たちは「大丈夫です、お預かりします」とお伝えし、作業に入りました。
翌日
お渡しの瞬間、お父様の表情が一変します。
「えっ!? こんなにキレイになるんですか!? まるで新品みたいだ…」
驚きと安堵と喜びが入り混じった声。
お父様はぽつりとこう言いました。借り物なので汚れを残したまま返せないし家庭の洗濯では落とせないのでお願いして本当に良かった・・・
実は、プロ野球チームのユニフォームも同じです。
選手が思い切りプレーできるよう、試合のたびに毎回、丁寧にクリーニングします。
泥のついたままではモチベーションも下がります。
だから私たちは、選手に“ユニフォームの汚れ”なんて考えさせたくない。
綺麗なユニフォームが当たり前。
その当たり前を、毎日・毎回やり続けること。
それが、プロの選手に対して、同じプロとして私たちができることだと信じています。
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その2日後、また同じユニフォームをお持ちいただきました。
「今回も落ちますか…」と。
もちろん、「大丈夫ですよ」とお答えしました。
すると今回は、奥様が感激され、お煎餅とコーヒー2本を差し入れてくださいました。
お気持ちが本当にありがたく、私たちの胸に温かいものが広がります。
家庭では落とせない汚れでも、私たちは違う洗剤、違う機械、そして何千回とプロ選手のユニフォームを洗ってきた経験があります。
その経験が、人の不安を安心に変え、笑顔に変わる瞬間。
この仕事をやっていて良かった——そう思える、忘れられない出来事になりました。